日本人は自分の意見を持っていない?

皆さんは自分の意見というものをお持ちでしょうか。それとも何かしらの意見を求められたときは、適当に答えてその場をやり過ごすでしょうか。おそらくほとんどの日本人は後者であると思います。これは別に悪いことではありません。そうやって日本人はなるべく争いを避けるために、周りに同調するという処世術を学んできたのです。そしてその考え方は懸命で素晴らしいと思います。治安の良さや真面目さといった日本が持つ素晴らしい面には、少なからずこの「同調の文化」が関係していると思います。では今回はこの日本人が持つ意見の特性について見ていこうと思います。

自分の意見は多数派の意見?

例えば「赤と青、どちらの色が好きか」という質問があったとします。あくまで例えですが、この質問を投げかけられたとき、日本人はまず「どちらが正解だろう」という思考をします。そして結果的に「赤」と答えた人が51%より多ければ赤が正解になります。そして「青」と答えた人は「失敗した、次からは赤と答えよう」と反省するのです。逆に青が51%以上のときは、赤と答えた人が反省することになるのでしょう。

そう、ここで重要になるのが、「赤と青のどちらが好きか」という部分はどうでもよくて、「うっかり間違った方を選んで自分が恥をかかないか」どうかという部分が最重要ポイントになります。このような日本人の持つ多数派に合わせる文化のことを、ここでは「51%の法則」と呼ぶことにします。

51%の法則のメリットとデメリット

ではこの「51%の法則」は良いことなのか、悪いことなのかが気になるところですよね。そこでこの法則の持つメリットとデメリットを見ていこうと思います。

まず「51%の法則」のメリットは、物事が正しい方向に向かっているときは全員が正しい方向へ向かえることです。それは何か共通の目的があって、それの達成に向けてがんばるときです。例えば戦後の日本は大変貧しくて、国民全員が復興に向けて努力しました。まさしく「皆んなが頑張っているから、自分もがんばろう。」という風にこの法則の思考が幸いしたのです。ご存知の通り、戦後の日本は凄まじい勢いで経済成長していき、今では世界に誇れる素晴らしい国になりました。これは「51%の法則」が良い働きをした例でしょう。

逆に「51%の法則」のデメリットは、物事が悪い方向へ傾き出すと全員が悪い方向へ向かってしまうことです。これは例えば長時間労働の問題がそうでしょう。日本人が残業をしてしまうのは、「皆んなが会社に残っているから、自分も残らなければならない。」という思考に陥るためです。そして結果的に日本全体に長時間労働と生産性の低下という問題が広がることになったのです。他にもブラック企業が増えてしまったこともそうです。「他の経営者もやっているから」という理由で、利益を優先して従業員をゴミのように扱う会社が増えてしまったことが原因でしょう。これらは「51%の法則」が悪い方へ働いてしまった結果です。

このように、「51%の法則」は良い時はとことん良い方向へ向かいますが、逆に悪い時はとことん悪い方向へ向かってしまうよう、シーソーのような働きをするみたいですね。そしてこれらのメリットとデメリットの両方に共通しているのが、「それ自体が正しいかどうか」ということよりも、「皆んながやっているかどうか」という部分が最優先されていることです。

日本を変えたければ51%以上を取るまで諦めるな

例えば日本から長時間労働の問題をなくしたいという目的があるとします。この目的を達成するためには、日本全体の51%以上の会社で定時退社が当たり前にならなければなりません。そうやって見ると、この問題の解決がいかに難しいことであるかよくわかりますよね。逆にいえばどれだけ叩かれたり非難されても、51%を取ればその時点であなたの勝ちなのです。だから本当に日本を変えたいなら、51%以上を取るまで諦めてはいけないのです。

最後に

繰り返しますが、日本人の持つこの文化が悪いものであるとは思いません。アメリカ人にはアメリカ人の文化があるし、イギリス人やフランス人、ドイツ人、中国人にもそれぞれが持つ特有の文化が必ずあります。どれが良くてどれが悪いということではなく、それぞれの文化をうまく生かしてよりよい世の中を作り上げていくことが人間にとって必要なことであると思うのです。

なので日本人が自分の意見を持っていないことを非難するのではなく、その特性を生かして良い方向へ持っていくように後押しすればいいのです。シンプルに考えれば、日本人の過半数の人が良いことをやり始めれば、おのずと日本全体が良い方向へ向かいます。もし何か変えたいことがあるなら、まずは51%に達するように、少しずつ割合を増やしていくことから始めましょう。すうすれば日本は必ずいい方向へ変わっていくでしょう。