アップル製品のポートフォリオはこうなる?

みなさんは「プロダクト・マネジメント・ポートフォリオ」というものをご存知でしょうか。これはマーケティングに使われる用語なのですが、簡単にいうとどの製品がどのくらいの位置にいるか図で表現するためのものです。

今回はこのポートフォリオを使って、アップルの製品が市場においてどのくらいの位置にいるのかを考えてみようと思います。検証するのは現在アップルから販売されている以下の製品です。括弧内はその製品の市場を表しています。それでは参りましょう。

  • iPhone (スマートフォン)
  • iPad (タブレット)
  • Mac (パソコン)
  • Apple Watch (スマートウォッチ)
  • Apple TV (ストリーミング端末)
  • iPod (デジタルオーディオプレーヤー)

※2016年12月時点の情報に基づいています。

アップル製品のポートフォリオはこうなる?

上の画像が現在アップルから発売されている製品のポートフォリオになります。シェアと市場成長率は2016年のデータを参考にして、大まかに場所取りしました。では各製品について見ていきましょう。

iPhone

iPhoneの市場シェアは、サムスンに次いで世界2位です。スマートフォン市場全体の10%程度を占めています。スマートフォン市場は売上、出荷台数ともに成長を続けており、昨今は中国の新興メーカーの参入も相次いでいます。iPhoneはアップルの売上の半分以上を占める超主力事業です。そのため今のアップルの業績は、iPhoneの売上に左右されているといっても過言ではありません。そんな中2015年頃からiPhoneの販売台数が減少し始めました。アップルはそろそろiPhone以外の主力事業を探し始めた方が良さそうですね。

iPad

iPadの市場シェアは世界1位です。タブレット市場全体の25%程度を占めています。iPadはiPhoneに次ぐアップルの主力事業です。ただし、スマートフォンと違って、タブレット市場の世界出荷台数は減少傾向にあります。iPadの販売台数も、2014年頃を境に減少し続けています。2015年のiPad Proの投入で利益は回復したものの、依然iPad全体の販売台数は減少しています。今後アップルがどういう戦略をとっていくのかが楽しみですね。

Mac

Macの市場シェアは世界5位です。パソコン市場全体の10%程度を占めています。1位はHPでシェアは20%。ご存知の方も多いですが、パソコンの出荷台数は減少の一途を経っどており、市場規模も縮小傾向にあります。このままパソコンそのものが消えてしまうのか、それともあるポイントで減少がストップして、横ばいになるのかは分かりません。いまだに法人市場ではパソコンは必須アイテムなので、おそらく数年以内になくなることはないと思いますが、逆にこれから劇的に増えることもないでしょう。

Apple Watch

Apple Watchの市場シェアは4位です。スマートウォッチ市場全体の5%程度を占めています。1位はFitbitでシェアは23%。スマートウォッチ市場はまだまだ黎明期ですが、2015〜2016年の出荷台数の低下から早くも成長率が止まったという見方もあります。今のアップルに必要なのは、とにかく販売台数を増やしてシェアを増やすことでしょう。廉価モデルのSeries1を併売しているのはいい考えだと思います。

Apple TV

Apple TVの市場シェアは4位です。ストリーミング端末市場の12%を占めています。1位はRokuでシェアは49%です。ストリーミング端末市場は全体的に成長傾向にあるようです。Apple Watchと同様に、今後はとにかくシェア拡大に向けての戦略を取るのが良さそうです。

iPod

iPodの現在の市場シェアは不明です。2010年ごろのデータではシェアは1位で、市場全体の70%以上を占めていました。そのまま変化がなければおそらく1位のままです。言わずもがな、デジタルオーディオプレーヤーの市場はスマートフォンの登場で大幅に縮小しました。それでもiPodはデジタルオーディオプレーヤーの市場をほとんど独占しているので、毎年何もせずとも一定の収益を上げているようです。主力のiPod nanoの新型が最後に発売されたのが2012年で、それっきり放置されているのにも関わらずです。まさに金の成る木といえるでしょう。

※2016年12月時点の情報に基づいています。

最後に

このポートフォリオを見る限りでは、アップルはやはり優良企業であるといえますね。しかし油断は禁物です。現在の主力事業であるiPhoneも、昨今は中国のスマートフォンメーカーに押されつつあります。ファーウェイのようにiPhoneと同程度の性能で値段がより安い端末が出れば、おのずと安い方を選ぶユーザーが増えるでしょう。そのため今後のiPhoneには価格以外の訴求要素が必要になります。

また、今後のアップルに必要なのは、iPhoneとiPadのシェアを落とさないことと、逆にApple WatchとApple TVのシェアを拡大することです。Macは毎年内部CPU/GPUを新しくするだけで一定の売上を得ることができます。iPodはそのまま放置しても問題ないでしょう。

いずれにしても、今のようなハードウェアの販売に頼りきった事業をしていると、いずれ安価な中国メーカーにシェアを奪われてしまうリスクがあります。そうなれないためには、Apple MusicやApp Storeなどの、他社が真似するのが難しいサービス面での利益を拡大することも重要かもしれませんね。

※2016年12月時点の情報に基づいています。