大学の「価格競争」が始まる?2018年問題は何を変えるのか

今回は、「大学の価格競争」についてご紹介します。

大学進学の際に気になるのが、学費にいくらかかるのかということですよね。2015年の年間にかかる平均授業料は、国立・公立大学で約53万円、私立文系で約90万円、私立理系で約123万円と言われています(参考: ベネッセ)。もちろん授業料以外にも、入学手続きにかかるお金や、大学によって諸々の費用を払わなくてはいけません。このように、大学へ行くのはとてもお金がかかることなのです。

やっかいなことに、大学の学費は年々上がり続けていたようで、なんと1985年から2015年までの30年の間に、国立大学・私立大学ともに授業料が2倍以上に増加しています(参考: 文部科学省)。もしこのままのペースで増え続けるなら、10年後は今よりもさらに高くなるかもしれません。

もちろん世の大学進学者の家庭は、皆が裕福なわけではありません。実際に半数以上の大学生が日本学生支援機構の奨学金(学生ローン)を借りている状況で、増えた分の学費はそのまま彼らの将来の経済負担として肩に乗ることになります。

果たして、大学の学費はこのまま増え続けるのか、それとも価格競争が始まって値下げすることはあるのでしょうか

大学の学費はこのまま上がり続けるのか

大学の学費はこのまま上がり続けていくのでしょうか、それともある時点を境にストップして減少に転じるのでしょうか。

実はアメリカでも大学の学費の高騰が社会問題になっており、学費は4年間で平均$9,650、およそ1,061万円かかるそうです(参考: TOP UNIVERSITIES)。このようにアメリカに比べれば、今の日本の学費は格安と言えるかもしれません。そのため、可能性としてはこのままアメリカと同水準まで学費が高騰することがあるかもしれません。

ところが、日本はアメリカと違って少子化が進んでいます。これからどんどん生徒の数が減っていくのです。これはよく「2018年問題」と言われています。

そして、この2018年問題をきっかけに、大学の授業料の価格競争が起こるかもしれないのです。

2018年問題とは?

2018年問題とは、18歳人口の減少によって大学進学者の数が1960年以降初めて減少するとされる「2018年以降に起きる問題」のことです(参考: 内閣府)。

これまでも少子化によって18歳人口は減っていましたが、大学進学率は増加していたのでトータルで見たときの大学進学者数はずっと増加を続けていたのです。ところが1992年をピークに大学進学者数は横ばいになり、2018年には遂に大学進学者の数が減少に転じることになります

これまでは売り手市場だった大学側も、これからは年々減り続ける生徒を確保するために必死になってくることが予想されます。そのため今の段階で定員割れを起こしているような大学は今後バタバタと倒産していくことが予想されます。

まさに大学機関にとっての氷河期が始まるのです。そして、この大学氷河期時代の生き残りをかけて、大学の価格競争が始まるのではないかと予想されます。

大学の価格競争が始まる?


例えばあるA校とB校の大学に合格したとします。

学力レベルは両校とも同じで、その他の実績も似たような大学だとします。では、A校とB校のどちらに進学するか、あとは何で判断するでしょうか。それはもちろん「学費」ですよね。もしA校の学費がB校の半分だったら、ほぼ間違いなくA校を選ぶ人が多いと思います。

もちろん、学費が安ければそれだけで志願者が増えるわけではありません。常に定員割れを起こしているような、いわゆるFランク大学が授業料を下げたところで、あまり志願者数が変わらないのは目に見えています。いくら安くても腐ったバナナは誰も買わないのと同じです。

しかし、もし価格の割にそれなりの品質だったらどうでしょうか?服で例えると、H&M、ZARA、ユニクロなどのファストファッションは価格の割にオシャレだから大人気になっていますよね。くら寿司、スシローなどの回転寿司チェーン店も、価格の割に美味しいから人気になっています。

このように偏差値がそれなり(50〜55程度)の大学が、学費を安くすると、それだけで一気に人気が出ることは十分あり得るのではないでしょうか。ここに、大学の価格競争が始まるキーがあるのです。

▼目に優しい「Kindle Paperwhite」もオススメです

最後に

今回は、「大学の価格競争」についてご紹介しました。

2018年問題を始まりとして、大学に進学する生徒の数は今後確実に減少していきます。そして大学側は生き残りをかけて減っていく受験者の確保に乗り出すわけです。

そうなれば、資金力があり、優れた経営力を持っている大学が、多くの生徒を一気に獲得し始めることは目に見えています。その戦略の一つとして、どこかの大学が学費を安くする可能性は否定できません。もしかすれば、将来は大学間の熾烈な価格競争が始まることになるかもしれませんね

これから大学を選ぶ際に重視されることは、「低学費・中学力・大量採用」の3つになることが予想されます。それは学費が安く(年間50万円程度)、それなりの学力(偏差値50〜55程度)で、大量採用(定員がとにかく多い)を行なっていて入りやすいといったものです。

もちろんトップ数パーセントのエリート学生には関係のない話かもしれませんが、受験生の中でもっとも数の多い平均的学力の生徒たちは、この3つの条件を満たしている大学をより選ぶようになるのかもしれません

もちろん実際に起こる先のことは誰にもわかりません。一つだけ確かなことは、これからの大学機関のあり方は、従来とは全く違うものに変わっていくということです。