「脱モノづくり」と「着コトづくり」こそが日本に必要!

日本といえば「モノづくりの国」として高い評価を得ていますよね。戦後の日本経済を支えたのは、間違いなく家電製品などに代表される「モノづくり」でしたし、日本製品というのは作りが丁寧で壊れにくいと票を得ました。ところが、日本が「モノづくりの国」として名を馳せたというのは、もう過去の話なのかもしれません。1980年代に変動相場制に移行して以来、海外にとって日本製品はとても高くなってしまいました。さらに2000年代に入ると、安価な中国製品がものすごい勢いで世界に進出し、やがてかつて日本人が担っていたモノづくりの仕事を、根こそぎ中国が持って行ってしまったのです。

このように、今では中国あるいは韓国に市場を奪われてしまった日本製品ですが、それでも今でもモノづくりの国として頑張っています。日本政府も、JDIなどを積極的に支援してモノづくりをサポートしていますよね。ところが今の日本に本当に必要なのは、モノづくりを復興させることではなく、早くモノづくりをやめてしまうことではないでしょうか。その理由には先進国の抱える、ある問題点があるのです。

先進国でモノづくりはできない?


モノづくりをする上で避けては通れないのは「人件費」です。一般的に人件費というのは先進国になればなるほど高くなります。そのため先進国となった今の日本は人件費がとても高いです。かつての戦後の日本というのは、モノづくりをするのに最適な環境でした。人件費は今よりもずっと安く済みましたし、何より固定相場制のおかげで、輸出品が売れに売れていたのです。その成功体験の快感が忘れられずに今でもモノづくりにこだわりたいのはよく分かりますが、日本はもうモノづくりをやめる時です。これはかつてイギリスやアメリカなどが通ってきたものと同じ道です。国が経済成長して豊かになると、モノづくりをやめて次のフェーズにいかなれければならないのです。

先進国ではコトづくりをやるべき?


では先進国では何をして経済を活性化すべきでしょうか。そのヒントはやはり「人件費」にあります。先進国では、人件費が高くても成立する事業に力を入れなければいけません。そしてその事業の条件は、「原材料を必要としないこと」と、「掛け算の商売ができること」です。掛け算の商売とは、1つのものを数倍にしてリターンを得られる商売のことです。

ずばり人件費が高くても成立する事業というのは、「金融」、「不動産」、「IT」です。金融とITと不動産はいずれも物質的なモノを持たないサービス産業です。それに加えて、1つのものを数倍にしてリターンを得ることができます。株・為替もそうですし、不動産価格もそうですし、ソフトウェア販売はコピーして配布できます。ここではこのような産業のことを、「モノづくり」に対して「コトづくり」と呼ぶことにしましょう。

日本のITはITじゃない?


人件費が高くても成立する仕事に「IT」が入っているのを見て、「え?ITって給料低くね?」と思った人は多いかもしれません。実際に日本のIT業界の給料はアメリカに比べるととても少ないです。なぜこんなに少ないかというと、日本のIT企業は基本的に「下請け」だからです。どこからの取引先から業務を委託して、システム等の開発を請け負っているからです。そのため「下請けの下請け」のような孫請け構造が発生し、やがて業界全体がブラックになったのです。

一方でアメリカのIT企業は基本的に親会社です。例えばマイクロソフトは自社の「Windows」と「Office」のライセンス料金だけで毎年莫大な利益が入ってきます。グーグルは「アドセンス」というプラットフォームを用意しておけば、あとは各企業が勝手にアドセンスに登録して広告を出してくれるので、自動的に大金を得ることができます。中小のIT企業においても、アンフェアな下請けの下請けになるようなことは基本的にありません。このようにアメリカのIT企業というのは、どこかの親となる会社から仕事を受注するのではなく、自ら開発したソフトウェアやサービスを売って収益を上げているのです。そのため日本のIT企業はそもそもIT企業とは呼べないかもしれませんね。

最後に


今やスマートフォン向けのCPUを作っているのは、中国や台湾の企業です。スマホ内部の部品には、まだまだ日本製品が多く使われていますが、これも中国製に置き換わるのは時間の問題だと思います。日本はどれだけ技術力を持っていても、「人件費」では中国には勝てないのです。やがて少しずつ力を失った日本企業を、中国や台湾の企業が買収して、技術だけ吸い取っていくでしょう。これはどうしても避けられないことなので、日本企業は一刻も早く「モノづくり」から「コトづくり」へとシフトしなければならないのです。もしそれができなければ、今後の日本経済はますます衰退することになるでしょう。