「無料が当たり前」という考え方は今後も加速するのか!?

先日スマホ向け初のマリオである「スーパーマリオラン」の配信が始まりました。全世界待望のマリオなので、さぞ高い評価を得ているだろうと思いきや、配信が始まるなり低評価のレビューが殺到したのです。その理由はゲームを遊ぶのに¥1,200かかるからということでした。そして「ぼったくりかよ」、「ゲームに金を払うわけないだろ」、「お金がない」といったレビューがアプリストアやツイッターに溢れかえることとなったのです。

これは現代においてはこれといって珍しい話ではありません。ゲームのプラットフォームがスマホに移ってからというもの、アプリストアには無料のゲームが溢れかえることになりました。その煽りを受けて、大手メーカーの作るゲームもまずは無料でダウンロードしてもらって、追加アイテムなどに課金してもらうことで収益を上げる方向へシフトしていきました。そのため今では「ゲームというものは無料で遊べるもの」という認識がユーザーに定着してしまったのです。

今は音楽にも金を払わない?


無料が当たり前になったのはゲームだけではありません。音楽もまた無料で聞けるものという認識が広まっています。事の発端は2000年代にインターネットの普及とともに、「ナップスター」をはじめ、「BitTorrent」のようなファイル共有ソフトが出回ったことでした。ちょうどその頃からiPodが爆発的に売れて、音楽はCDやMDで聞くものから、音楽ファイルをiPodに入れて聞くものへと変わっていったのです。そこでわざわざCDをリップしてデータ化するなら、初めから誰かがデータ化したものをネットからダウンロードした方が早いということにユーザーが気づき始めます。

しかもネットから違法にダウンロードすれば、完全に無料で音楽が聞けるのでデメリットが一つもないわけです。こうして音楽の違法ダウンロードが全世界で広まり、その頃から「音楽は無料で聞くもの」という習慣が広がってしまいました。この傾向は今でも続いているため、もはやレーベルはアーティストのミュージックビデオを公式にYouTubeで無料公開して最初から誰でもタダで聞けるようにしています。また、「スポティファイ」のような基本無料で利用できるストリミーングアプリが流行った背景にも「音楽は無料で聞くもの」という文化が大いに関係しているでしょう。

なんでもかんでも無料が当たり前に?


無料が当たり前になったものはまだあります。アマゾンの普及で一気に広がったのがオンラインショッピングでしたが、その際に発生する「配送料」も、いつの間にか無料が当たり前になってしまいました。もちろんこの背景には運送業者に多大な負担がかかっているという事実があるのですが、ユーザーにはそのことは見えていません。

他にもLINEやWhatsAppのような無料通話アプリの普及によって、「通話料」さえも無料が当たり前になってしまいました。このことで日本の通信会社はさほどダメージを受けていないようですが、ヨーロッパの通信会社は深刻なダメージを受けており、利用規制に乗り出すという話もあるそうです。

また「動画の視聴」も無料が当たり前になりました。これはYouTubeが爆発的に普及したことが原因ですが、YouTubeの動画投稿には広告収入のシステムがしっかりあるので、新たな市場を生み出しているのも事実です。また、タダではありませんが、ネットフリックスのように定額で映画が見放題のサービスも増えてきています。

そして「ニュース」を読むのも今となっては無料が当たり前です。かつてはどの家庭も月におよそ¥4,000近くも支払って紙の新聞を購読していました。今では最新のニュースを瞬時に、しかも無料で読むことができます。ネットニュースには信憑性の問題はありますが、大手新聞では取り上げないようなトピックも読めるようになり、ユーザーの幅が広くなったのも事実です。

最後に

ではこのように、なんでもかんでも「無料が当たり前」になっていく傾向は、「良いこと」なのでしょうか、それとも「悪いこと」なのでしょうか。その答えは、どちらとも言えません。なぜなら、従来のやり方で収益を上げていた企業にとってはもちろん悪いことですが、その分新規参入の障壁が低くなって新たな企業が生まれたからです。

ユーザーがスマホでゲームを遊ぶようになってから、ガンホーやサイゲームズのようなスマホ向けのゲームで収益を上げる新しいアプリゲームの会社が出てきました。ユーザーがネットでニュースを読むようになってから、スマートニュースやニューズピックスのような新しいニュースアプリの会社が登場しました。ユーザーがYouTubeで動画を見るようになってから、ユーチューバーのような新しいスターが生まれました。運送業も、いずれはドローンや自動運転を手がける新たな輸送会社が誕生するかもしれません。

もちろん無料化にともなって、経済全体の売上は下がったのかもしれません。しかし人々が無料化を求めたのは時代の流れであり、それによって企業の代謝が起きたのは良いことだと思います。ビジネスのあり方は時代とともに変わっていくもので、お金を稼ぐ方法もまた時代とともに変わっていきます。今現在主流の働き方が、数十年後にはまるっきし変わっていることもあり得ます。大切なのは時代の波を見極め、それに乗ることではないでしょうか。そして変化が原因で問題が発生したとしても、常に新しいやり方で対応していかなければいけません。