アニメ制作までもがAIに侵食される?

日本のアニメといえば、皆さんご存知の通り世界で大人気です。キャプテン翼やドラゴンボール、ナルトを始め、最近では進撃の巨人やワンパンマンなどが熱狂的な人気を集めているようですね。そして何と言っても2016年に公開された映画「君の名は」は世界中で大ヒットを記録しています。そんな世界で誇れるアニメを作っているのは、他でもない「アニメーター」の方々です。ところが、これほどの偉業を成し遂げておきながら、日本のアニメーターが薄給なのは有名な話です。その平均年収は332万円ほどで(参考: 東洋経済オンライン)、同じアニメを手がけるウォルト・ディズニー・スタジオのアニメーターの12万〜14.8万ドル(1ドル113円で1,356〜1,672万円)とはかけ離れています(参考: glassdoor)。

そんな中、アニメーターの仕事さえも、最近話題の「AI」によって減っていくかもしれないという話が出てきました。そう唱えるのは「AT-X」というアニメ専門チャンネルの社長を務める岩田圭介さんです。

アニメ制作はAIに侵食される?


2月9日に開催された、アニメ・ビジネスフォーラム+2017にて岩田社長が語った言葉は以下の通りです。(参考: IT media)

 「AIによる“創造領域”への侵食が既に始まっている。キャラクター設計や絵コンテ、美術設計、背景、音響作業、色彩設定といったものもAIが作れるようになるだろう。人間は、AIと違って“忘れられる機能”を持ち、使い続ければ進化し続ける。自分で脳みそを鍛え続ければ、クリエイティビティは発揮されるだろう」

これは、AIがアニメの制作現場で行うのは、「ある程度パターン化された仕事」を楽にするということではないでしょうか。それは背景を描くことや、色を塗る作業、絵コンテの制作などのことです。逆に言えば、シナリオをゼロから考えたり、魅力的な舞台設定を考えることは、最後まで人間の特権だということではないでしょうか。

アニメ制作はより少人数制に?


AIの導入によって、本当に優秀な数人のスタッフだけでアニメをつくることが可能になるかもしれません。例えば藤子・F・不二雄さんのような魅力的な設定やストーリーを考えられる人が一人いれば、あとはたった数人で劇場版レベルのクオリティのアニメに仕上げられるかもしれないということです。すでに画家レンブラントの絵を学習してレンブラント風の絵を描けるAIがいるように、キャラクターデザイナーの書いた絵をAIに学習させればそのデザイナーの癖を覚えたまま新しいキャラクターを生み出してくれます。あとは絵コンテAIの力を借りながら絵コンテをつくっていき、原画をもとにコマとコマの間を補完して動きをつけるAIを使って仕上げていけばいいのです。もちろん彩色や背景の描写もAIの手を借りれば楽になるでしょう。

最後に


アートや音楽などの、創造的な仕事は機械に代用されにくいというのがこれまでの見解でした。ところが、すでに絵を描くAIや、作曲できるAIが登場していることを見ると、AIは創造性までもたやすくコピーしてしまうのかもしれません。これはアニメーターなどの仕事を奪ってしまうという悪い面での見方もありますが、逆にいえば、絵を描くといった繰り返しの作業をAIに任せて、制作者は「シナリオ」や「演出」といったより高度な部分に集中できるようになるのではないでしょうか。AIが絵を描くようになれば、「作画崩壊」のような珍事がなくなってテレビシリーズでも劇場クオリティの絵になるかもしれません。そして従来よりも絵を描くスピードが上がるので、シナリオや構成を練る時間が増えます。AIの進歩によって、これからのアニメは作品そのもののクオリティはますます上がっていくのかもしれませんね。