ガタカの世界が現実に!? デザイナーベビーは許されるのか

皆さんは「ガタカ (GATTACA)」という映画をご存知でしょうか。ガタカは遺伝子操作が可能になった近未来の世界が舞台で、生まれてくる子どもたちは何らかの遺伝子操作を受けて、あらゆる病気のリスクを事前に取り除かれたり、知能や運動能力、視力に至るまで「完璧」に仕上げられているのが当たり前になっているという世界を描いています。

そんな遺伝子操作を行った完璧な子ども、いわゆる「デザイナーベビー」の誕生がいよいよ現実味を帯びてきたようです。長年困難だった遺伝子組換が「クリスパー (CRISPR)」の進歩によって格段に容易になったそうです。すでにこの「クリスパー」を用いて牛の結核耐性を高めることに成功しており(参考: GIGAZINE)、やがては人に応用されて、デザイナーベビーの誕生も可能ではないかと考えられているようです。

クリスパーとは

クリスパーの細かいメカニズムについてはうまく説明できませんが、従来は複雑を極めていた遺伝子組換操作が、クリスパーによってより短時間・低コストで容易に行えるようになったようです。

上の動画ではクリスパーが人類をどう変えるのか、ということが説明されています(CCで日本語字幕をオンにできます)。このクリスパーによって、これまで不可能とされていた遺伝子組換による「理想の人間」をつくることが可能になっていくと言われているようです。

例えば重大な病や障害のリスクを生まれる前から全て取り除くことや、高い知能や運動能力を持った子どもをつくることも可能になっていくかもしれないのです。

人間の遺伝子操作は許されるべき?

クリスパーによって医学的にはあらゆることが可能になった遺伝子操作ですが、これは倫理的には許されるのでしょうか。例えば将来、お金持ちの子どもたちは生まれながらにして病気に強く、高い知能と運動能力を持ったデザイナーベビーとして誕生することになるかもしれません。

そうなれば、庶民や貧困層はどうあがいてもDNAレベルで彼らに太刀打ちできなくなります。すでに生まれる前から差別が始まるとなると、人類の平等は完全に消え去ってしまいます(現代でも不平等は進んでいますが)。

デザイナーベビーが認められるか否かという問いに対して、アメリカ科学アカデミーは以下のように提唱しているようです(参考: GIGAZINE)。

「将来的に、ある一定条件のもとで人間の生殖細胞系を編集することは、重大な疾病を防ぐことにつながるため許可されるべきである」

つまり条件を満たせば遺伝子操作はOKにすべきということのようです。しかしそれは”重大な疾患”を防ぐことに限定されるべきで、理想の人間をつくることに使われるべきではないということかもしれません。

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最後に


もちろんクリスパーによって何でもできるようになったわけではありません。そして遺伝子操作の過程で想定外の副作用が生じるリスクもあるはずです。まずは重大な疾患リスクを生まれる前から取り除くことから始めて、そこから徐々に遺伝子操作を受け入れていくことが大切かもしれません。とはいっても、上の動画にあるように人類は新しいものにすぐに適応してしまう生き物です。遺伝子操作によって病気を取り除くことがOKなら、生まれてくる子どもの知能を高くしたり、運動能力を上げても構わないんじゃないかと思い始めるでしょう。

いずれにしても、お金持ちの子どもは病気のリスクを生まれる前から取り除かれることになるので、その時点で所得格差による「寿命格差」が生じることになります。現代は学歴差別などが存在していますが、いずれは映画「ガタカ」のように、DNAで適正と不適正を振り分けられる「DNA差別」が始まるのかもしれません。優れた遺伝子を持った人は地位の高い職業と高い報酬をもらい、そうでない人は貧しくなっていくのでしょうか。この議論が社会問題になるのは、それほど先の話ではないかもしれませんね。