富士通の携帯事業撤退は、自動車メーカーの未来の姿なのか?

日本を代表する大手電機メーカーである「富士通」が、自社の手がける携帯電話事業を売却することが決まりました(参考: 富士通、脱・汎用品でIT集中 携帯事業売却へ )。これにより、2001年時点では11社あった日本の携帯電話会社のうち、残るは「ソニー」、「シャープ」、「京セラ」のわずか3社に減ることになります。もちろん、富士通や他の名だたる電機メーカーが携帯電話事業を撤退せざるを得なくなった理由は、「スマートフォン」のせいです。ほとんどの日本メーカーは、まさかスマホが主流になるとは考えてもいなかったために、開発が遅れ、競争にも敗れてしまったと言われています。そして、奇しくもこのガラケーからスマホへのパラダイムシフトは、これから自動車メーカーの間でも起ころうとしているのかもしれないのです。

ガソリン車からEVへ?100年に一度の転換期がやってくるのか

自動車製造の歴史を見ると、1908年のT型フォード登場の頃から、「ガソリン車」が一般大衆に向けて普及し始めました。それから100年以上経った今も、自動車のメインの動力源はガソリンで、それを補助するかたちでハイブリット車などが製造されています。しかし、この100年以上続いたガソリン車の歴史が、遂に変わるかもしれないのです。それが、電気を動力として走る、「電気自動車(EV)」です。2008年に発売されたテスラ社の「テスラ・ロードスター」を始めとして、2009年には三菱自動車が「i-MiEV」を、2011年には日産が「リーフ」をと、各社続々とEVを発売していきました。その後テスラ社は量産機である「モデルS」、「モデルX」を続々と発売し、さらに普及価格帯となる「モデル3」の納車も2017年7月から始まりました。日産も負けてはおらず、フルモデルチェンジした「リーフ」を9月に発表します。まさに、2010年前後に産声を上げたEVが、遂に立ち上がり、歩き始めようとしているのです。すでにフランス、イギリスでは2040年までに完全にガソリン車の販売を終了することを公言しています。これからはガソリン車からEVへの、世紀のパラダイムシフトが始まるのかもしれないのです。

EVに懐疑的な日本メーカー

では、日本メーカーのEVへの開発姿勢はどういうものかというと、正直あまり積極的ではないように思えます。日本を代表する自動車メーカーである「トヨタ」は、一応EV開発を示唆する発言をしていますが(参考: いがみ合うトヨタとマツダの「弱者連合」…世界的にEV主流化、「乗り遅れ組」同士の提携)、今後もメインは従来通りガソリンを中心としたハイブリット車で、次世代車にはEVよりも「水素(燃料電池)自動車」を推しています。ホンダも一応中国市場向けにEVを投入するという程度で、マツダもトヨタとともにエンジン開発をがんばるようですし、スバルも一応2021年頃にEVの発売を目指してるよという程度です。このように、各社ともにあまり本腰を上げてEVの開発を進めているようには見えません。これは「一応は作るけど、ぶっちゃけEVなんて流行らないだろう」と考えているからかもしれません。もちろん、結局EVが普及せずに終わればそれでいいのですが、このまま自動車市場におけるガソリン車からEVへのパラダイムシフトが起こってしまえば、既存の自動メーカーたちは窮地に立つことになりかねません。EVが流行るかどうかの様子を伺うっている間に、テスラなどの海外メーカーに圧倒的な差をつけられ、致命的な遅れをとることも十分にありえます。まさにiPhoneの上陸によって駆逐されたガラケーの二の舞になるかもしれないのです。

最後に

今回は、「富士通の携帯事業撤退は、未来の自動車メーカーの姿なのか」についてご紹介しました。日本国内の自動車市場は、年々縮小を続けているので、日本でEVが流行るかどうかはメーカーにとってそれほど重要ではないかもしれません。巨大な自動車市場であるアメリカや中国、ヨーロッパにおいて、今後EVが主流になるのか、ならないのかがとても重要になってきます。また、EVの普及に合わせてクリーンエネルギーにも投資していかないと、電気の使用量が増えてCO2排気量も増えることになります。今後やってくるかもしれないガソリン車からEVへのパラダイムシフトは、ガラケーのそれとは比べものにならないくらい大層なものになりそうです。