iPhoneのDolby Vision撮影対応で、HDR動画の時代が始まる?

2020年10月13日(米時間)に、新しい「iPhone 12」と「iPhone 12 Pro」が発表されました。

「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」は、新しいデザインの採用、5G対応、A14 Bionicチップの搭載、スマートHDR3対応、MagSafe対応といった新機能が盛り込まれています。

中でも注目の新機能が、Dolby Vision対応HDRビデオ撮影です。

「Dolby Vision」はHDR動画の規格の1つで、iPhone 12、iPhone 12 Proでは10bit Dolby Visionの動画撮影に対応します。

現状では、HDR動画はまだまだ普及が進んでおらず、従来規格のSDRが主流です。

果たして、iPhoneのDolby Vision対応をきっかけにHDR動画の時代が始まるのでしょうか。

iPhoneのDolby Vision撮影対応で、HDR動画の時代が始まる?

Dolby Visionとは?

そもそも、「Dolby Vision」とは何なのでしょうか。

「Dolby Vision (ドルビー・ビジョン)」とは、ドルビーラボラトリーズ社が開発・提供している動画規格です。

「Dolby Vision」は、HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)の映像規格の1つです。

「HDR」の規格には、Dolby Visionの他にもHLG、HDR10などがあります。

「Dolby Vision」は、最大12bitカラー、10,000nitまで対応していることが特徴です(参考: 2020年 ドルビービジョンとHDR10を本気で比較!)。

ライセンスフリーの「HDR10」は、10bitカラー、1,000nitまでしか対応していないようなので、Dolby VisionはHDRの上位規格として位置付けられています。

すでに、「Dolby Vision」に対応するテレビがソニー、パナソニック、東芝、シャープ、LGなどから販売されています。

Dolby Visionに対応するメディアとしては、Ultra HD Blu-ray、Netflix、Apple TVアプリの映画、Apple TV+などがあります(参考: 「Apple TVアプリ(iTunes)」の4K HDR対応映画!作品の一覧【随時更新】)。

このように、「Dolby Vision」は次世代のHDR規格となっています。

iPhoneがDolby Visionの動画撮影に対応

「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」より、Dolby Visionの動画撮影に対応します。

「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」のDolby Vision撮影は、10bitに対応しているようです。

クロマの記載はないのでおそらく4:2:0となり、コーデックはHEVCとなっています。

これまで「Dolby Vision」は、シネマカメラでRAW撮影されたデータを編集してDolby Visionとして書き出すのが一般的でした。

そのため、「Dolby Vision」の動画撮影に対応したカメラは発売されていないので、「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」が世界初となります。

「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」のDolby Visionの撮影では、

Appleが設計したISP

その仕組みを紹介しましょう。まずiPhone 12 Proが、2つの露出をApple製のカスタム画像信号プロセッサに通してヒストグラムを作ります。ヒストグラムとは、各フレーム内の色調の値を示すグラフです。つぎに、このヒストグラムをもとにDolby Visionのメタデータが生成されます。これをリアルタイムで行うには、A14 Bionicの圧倒的な速さが必要です。

iPhone 12 Pro

といった具合に、アップル独自の方法で行っているようです。

そのため、他社の一眼レフカメラやビデオカメラなどが「Dolby Vision」の撮影に対応するのはそう簡単にはいかないと思います。

ちなみに、iPhoneでDolby Vision撮影した動画は、「AirPlay」を使ってスマートテレビやApple TVで再生できるようです。

HDR動画の撮影はHLGを使うのが一般的だった

「HDR」の動画の撮影は、一眼レフカメラやビデオカメラでも対応が進んでいます。

ただし、一眼レフやビデオカメラでは、「HLG (ハイブリッド・ログ・ガンマ)」を使ったHDR動画の撮影が一般的です。

「HLG」には、SDRとの互換性もあるので、BS4Kなどの放送業界でも採用されています。

テレビ番組などの撮影に広く使われているソニーの「XDCAM」でも、「HLG」が採用されています。

このような背景から、私は「iPhoneがHDR動画撮影に対応するときはHLGを採用するのかな」と思っていたので、まさかのDolby Vision対応が発表された時はかなり驚きました

HLGやHDR10をスルーしていきなり「Dolby Vision」に対応するとなるとかなりインパクトがあるので、これは「試しに使ってみたい」と思った方も多いのではないでしょうか。

HDR動画の時代が始まる?

2020年現在のところ、HDR動画はあまりポピュラーではありません

その理由としては、「HDR動画の撮影はなんか難しそう」や、そもそも「HDR動画が何か知らない」といったことがあると思います。

そこで、「iPhone 12」、「iPhone 12 Pro」がDolby Visionの撮影に対応したことで、誰でも簡単にHDR動画が撮影できるようになります。

そうなると、気軽に「Dolby Vision」で動画を撮影して、テレビにAirPlayをして見ることもできるので、HDR動画を利用する人も徐々に増えていくかもしれません。

また、今後はiPhoneで撮影したHDR動画がYouTubeに続々と投稿されていくことになるので、見る側も「HDRは画質が良いよね」と認識が広まっていく可能性もあります。

このように、iPhoneが「Dolby Vision」の撮影に対応したことで、HDR動画が普及するきっかけとなるかもしれません。

ただしYouTubeはDolby Visionには非対応

ここで押さえておかないといけないのが、YouTubeはDolby Visionに対応していないということです。

「Dolby Vision」は、使用するためにドルビーラボラトリーズ社にライセンス料を支払う必要があるので、グーグルとしてはおそらく今後も対応する可能性が薄いです(HEVCにも非対応のため)。

とはいっても、YouTubeはHLGとHDR10に対応しています(参考: ハイ ダイナミック レンジ(HDR)動画をアップロードする)。

HLG、HDR10、Dolby Visionには互換性がありませんが、編集ソフトで書き出す際に変換することで対応ができます。

今後の予想としては、iPhoneで撮影したDolby Visionの動画を、Final Cut Pro、DaVinci Resolve、Premire Proなどで編集し、HDR10で書き出してYouTubeにアップロードする方法が一般的になるのではないでしょうか。

すでに「Final Cut Pro」はDolby Visionに対応することがアナウンスされていますが、「DaVinci Resolve」、「Premire Pro」の対応は不明です。

また、iPhoneで撮影したDolby Vision動画をそのままYouTubeにアップロードできるかどうかも疑問なのですが、もしかするとYouTube側がHDR10へ変換してくれるように対応してくれるかもしれません。

ちなみに、AppleのYouTubeチャンネルには、iPhone 12で撮影した「Shot on iPhone 12 Pro by Emmanuel Lubezki — Apple」という動画が公開されていますが、2160p SDRとなっていました。

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最後に

今回は、『iPhoneのDolby Vision撮影対応で、HDR動画の時代が始まる?』についてご紹介しました。

このように、iPhone 12、iPhone 12 ProがDolby Visionの撮影に対応したことで、HDR動画が普及するきっかけになるかもしれません。

これまでもHLGの動画撮影に対応する一眼レフやビデオカメラはありましたが、色々とめんどくさいという理由から、HDRはスルーしてSDRで撮影していたパターンも多かったと思います。

iPhoneでは、ボタンを押すだけで簡単にDolby Vision動画を撮影できるので、HDR動画にとってはブレイクスルーになるかもしれません。

果たして、iPhoneのDolby Vision撮影対応によって、HDR動画はこれからどうなるのか、注目ですね。

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